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義足なのになぜ剣道


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私の不注意によって、昭和四十三年三月に交通事故を起こし、右足首切断・右大腿部複雑骨折・
左大腿部粉砕複雑骨折という重大な事故を引き起してしまいました。

荷主さんの所で荷物を降ろし、神奈川県の厚木から座間街道を走行して帰る途中の出来事でした。
原因は、無理な追越しをして正面衝突、双方の車両は大破。

救急車で厚木市内の近藤整形外科病院に運ばれ七ヶ月間の入院生活が始まった。
 その間、四ヶ月間寝たきり、手術は二度行い、その後はリハビリの毎日。 

退院後、会社の寮に戻り、通院治療に専念することに、杖を突きバスと電車を乗り継いて、 
金町整形外科病院に、約一年という長い通院治療生活を送る事を余儀なくされた。 

既にこの頃、二人の子供が居て、不自由な体で働く事も出来ず生活状態は最悪、心も貧しく
どん底の生活を送っていた。

生きる希望も失い片足のない私がこれからの人生をいかに生きていくか悶々としていた時期が
続きます。

8年後、二人の子供はすでに剣道を始めていて、子供を道場に送った後、稽古を見学するのが
唯一の楽しみでもありました。

 二人の子供達に強くなってもらいたいという願いから始まった剣道ですが、ある日見学して
いる時、知人が防具を貸すからやってみたらと勧められて、義足の私に出来るだろうかと、
心配はありましたが、お言葉に甘え剣道を体験して見ることにしました。

やってみると、義足であるはずの私が何とも不思議な気持ちに駆られ、義足を嵌めている事さえ
忘れて、身体も軽快に動くことに驚きさえ感じました。

今までの心の貧しいどん底の日々から希望の光が見えた瞬間でした。

こうして始まった剣道ですが、子供たちは足の不自由な私を心配して猛反対しましたが、
子供たちの心には不自由な私を世間にさらしたくないという気持ちがあったのかも知れません。


しかし、そんな回りの気持ちを振り切り稽古に没頭する毎日が続きます。

何かに取り付かれたように、無我夢中になって稽古をしました。
人生に新たな夢と希望が芽生え、更に生きる喜びも湧いたバラ色の時期でもありました。
  

しかしながら、剣道の稽古は私にとって辛い日々も続きます。
調子に乗って稽古をやり過ぎて、切断した先端部分がすり切れて痛み出し、血だらけになったり
稽古中に義足の足がとても痛くなり耐えながらの稽古、でも稽古終了後の汗が吹き出る顔や腕を
手拭で拭う時の清々しさに、とても癒され至福の時を感じることが出来、益々剣道にのめり込む
自分を感じられずにはいられませんでした。

初段審査にチャレンジし合格をした時のことは、何ともいえない喜びと感動・感激に包まれ、
生まれて初めて味わう最高な気分でした。

段々と私自身に誇りと意地が芽生えて来て途中で辞めるようなことがあったら、障害者には
やはり剣道は無理だったと言われることは必定。

 その言葉だけは、何としても避けたいという一身で一度決心して始めた以上どんなに辛くても、
世間の人に認めてもらうまではやり抜く意志を、持ち続けることでした。

その姿勢・態度を子供たちに見せることによって、どのような辛いことがあっても、屈せず乗り
越える勇気と気力を、養ってもらえればという親の思いで続けてきましたが子供たちにはどう映っ
ていたのでしょうか。

義足を履いて剣道をやる事は、最初から無理な話、それを承知の上でのめり込んだ剣道の道。
剣道は、とても奥の深かい難しいものです。 
 これからも義足の剣士として私なりに剣道を追及し、究めようと努力をしているところです。

剣道最高位である、八段合格にも数回挑戦しています。
体の続く限りこれからもくじけず合格を目標にして頑張っていきます。

 


追伸

 殆どの身体障害者は、世間の冷めたい目線に曝され、耐え凌いで生涯を送って居るのが現状です。
 私も障害者になった頃は、健常者の目線や暴言には精神的に参りました。

 私の場合、人生の途中で障害者に成ったこともあり抵抗がありました。
 乗り合いバス・電車に乗っている時に、耐えがたい目線に憤りを覚えたこともありました。 

 余りにも偏見があり過ぎて、言葉では現す事が出来ない。それを跳ね返す為に恥を忍んで剣道の
道に進んで来ました。

 こうして頑固一徹に横目も振らず、真一文字に闘牛のように突き進み、今は外国にも出向き、
多くの外国人剣士や外資系に勤める剣士たちとの出会いがあります。また、お弟子さんも多く出来、
今では気の向くままの生活を楽しんでいます。 

身体障害者となった頃は、世間の目も気になり、偏屈な人間にもなりましたが、家族の支えも
合って、今日まで剣道を続けさせて頂いていることに感謝です。

障害者の一人として障害者だからといって、心を頑なに閉ざす必要は無い。
 もっと広い視野を見詰める事も必要かと思います。

今、障害者スポーツは世界中で盛んに活動し、日本でも多くの障害者がスポーツ競技に参加し、
国際大会出場に夢膨らませて頑張っている人も多くいます。

その裏ではスポーツに参加出場できない重度の障害者もいることも忘れてはならないと思います。

未だに日の当たらないところに、置き去りにされている障害者もいると聞いています。

何も好き好んで障害者に成った訳ではない。重度障害者の介護については行き届かない介護法の
対応にも怒りを覚えます。

現状の介護は、殆ど家族の手で行われ、中には年老いた人達によって介護している状況に、早く
国の救済が必要と訴えたい。

人は皆、平等に命を授かり誕生し、突然に自由を奪われて、青空に羽ばたくことも出来ない方々も
居ます。人として温かい心で接して欲しいと願うばかりです・・。

全国の障害者にもの申す、体に障害があるからといって、頑なに心を閉じる事はないと思います。
折角与えられた命を無駄のない、人生を過ごす事を心より願っています。

おこがましいことですが、同じ障害者の人たちに勇気と希望を与えられたらと、このページに
私の意見を掲載させていただきました。

この先、剣道をどのくらい続けられるかわかりませんが少しでも長く続けられるよう健康に注意

を払って修行して生きていこうと思っております。

長々とご拝読ありがとうございました。